Illustration by ruder

おわりに

 クロウラーの土のにおいは、どうも私の郷愁を呼び覚ますことがあるようだ。  クロウラーからは生のにおいがする。植物も虫も地中で蠢いているのを感じる。上下左右の別なく脈打つ生命のエネルギーに満ちている。  それは決してうんざりするような押し付けがましいものではなく、なんとなくそういうものだと感じさせるような地味なものだ。  追体験とでもいうのか、素朴な空気ととっぷりと暮れた暗闇が妙な雰囲気を醸し出していて、よっぽど衒学的にさせるのかもしれない。  思索の時を終え、クロウラーの巣の外に這い出して日の下に出ると、世紀の大発見について私はあれこれ考えなおさなければならなかったことがなんどもある。  休暇を取ってクロウラーに踏みこむと、旅路の中で忘れていたクロウラーでの辛い日々を思い出す。そうやってまた頼まれてもいないような苦労をしようとしている自分には心底あきれ返る。  何度もう二度といくまいと思ったか知れないが、独特な人々と土のにおいが懐かしくってしょうがないのだ。  そう簡単に認めたくないが、クロウラーには私をひきつけるようななにかがあるらしい。  もし、少しでもクロウラーの魅力を伝えることが出来たのなら、これほど嬉しいことはない。そして、なにをトチ狂ったか、きみたちの何人かがクロウラーに潜るというのなら、多少の助けにはなるだろう。  クロウラーは、誰も拒まない。ただぽっかりと地面に穴をあけて、いつだって魔術師の訪れを待っているのだ。


2014/02/03