Illustration by ruder

新しい機種(問題編)

 冴えない探偵業の真似事を終え、くたくたになって家に帰ってみると、携帯電話に着信履歴があった。  私立探偵がこれではよくないとは思うが、私は近代的な機械はあまり好きではない。  無視をして依頼人への報告書をまとめていたが、それにも飽きてきて隅っこに落書きをしていると、再び電話が鳴り出した。  携帯電話は嫌いだが、ひとつだけ良い点はあると思う。私はこのクラシック曲が好きだ。 「はい、こちらグットフェローズ探偵事務所ですが……」  もったいぶって電話に出ると、受話器の向こうから甲高い男の声がした。 「携帯、変えた?」 「え?」 「……ああ、いや、なんでもないよ、もしもし」  しばらく会っていなかったせいで、思い出すのに少し戸惑った。  電話の相手はトグラだ。  トグラは市役所につとめていて、いつも私のところに厄介ごとを持ってくる。そういえば、何かの折に番号を教えていたかもしれない。 「ああ、えっと、無断で他人の住民票を発行したことについてなら私は……」 「暇かい?」 「あ、うん」  思わず正直に言ってしまった。 「少し相談したいことがあってね。会えるかな?」  トグラはそれから住所を言って、こちらの返事も待たずにがちゃりと電話を切った。今からか?  いつものことである。私はなんとか手帳の端にメモをとった。  たまたま手元に手帳があったから良いものの、奴は、いきなり言われた長い文字列が寸分の狂いなく頭に入ると思っているのだろうか。頭の良い奴はこれだから困る。  ぴかぴかの携帯を机において、私はふと疑問に思った。  たしかに一週間ほど前、私は携帯電話をぶっ壊した。データが救出できず、そのために今の電話がトグラからのものだとはわからなかった。  しかし、私の電話番号は以前のものと同じである。  いったいどうしてトグラには私が携帯を変えたことがわかったのだろうか。


なんちゃってミステリー