円形の湖の中心に、ボートが1艘います。真北の岸には、ボートの4倍の速さで走る虎が1匹。 虎は常にボートとの距離が最短になるように岸を移動します。 ボートのほうが遅いのに、虎に捕まらず岸にたどり着けるでしょうか?
この設定で、ボートは逃げ切れる?
予想を選んでから、再生してみましょう。
再生すると、ボートは ① → ② の順に動きます。今の段階に当たる解説を、下で色付きにします。
① 内側ほど速く回れます。 半径 r の位置でボートが出せる角速度は v⁄r です。 虎の角速度は V⁄R が上限なので、r < R/k の内側にいる間はボートのほうが角度の上で速く回れます。
② 中心をはさんで正反対の位置を保ちます。 この性質を利用して、虎と反対側に位置を取りながら、半径 R/k の少し内側までらせん状に外へ移動します。
③ 岸へまっすぐ進みます。 虎と反対側の岸へ直線で漕ぎます。虎は半周(πR)を走る必要があり、ボートが先に岸へ着けば脱出できます。
「4倍速」の設定(k=4)はこの境界をわずかに下回るため、ボートは岸にたどり着けます。 逆に k が π+1(約4.14)以上になると、この戦略では逃げ切れません。
③ で岸へまっすぐではなく、安全圏の円に接する向き(虎が回っている向き)へ漕ぐと、虎はボートを追って同じ向きに回り続け、半周より長く(π + arccos(1/k) の角度だけ)走ることになります。ボートの道のりは √(R² − (R/k)²) です。
この図の虎は、ボートのいる方角へ近いほうから回り込みます(ちょうど半周で左右が同じときは、それまでの向きのまま)。また、ボートは R/k のほんの少し内側から岸へ向かうので、境目は理論の値(4.14、4.60)よりわずかに手前になります。
このパズルは、円の中で追う側と逃げる側が動く「ライオンと人(Lion and Man)」系の追跡・回避問題から派生した、湖と怪物(犬)版です。 Rado が1925年に提起し Besicovitch が1952年に解析した古典は、両者が同じ速さで円の内側を動く別バージョンで、 今回の「中心のボートと、岸だけを速く走る虎」とは設定が異なります。 湖版の言い回しに単一の最初の作者はなく、レクリエーション数学の定番として広まっています。